ペットトイレのすすめ


島原振興局 都市計画課 井手 哲

 

 

1.はじめに
 人はだれもがいつか老いを迎える。また、いつ不慮の事故で身体障害者になるかもしれない。そうしたときに、私たちの住む街は、そして憩うべき公園は、私たちをやさしく受け入れてくれるであろうか。
 長崎県では、高齢者や障害のある方を含むすべての人が自由に行動・活動することができる地域社会の実現を目指して、平成9年3月にようやく「長崎県福祉のまちづくり条例」を制定した。

 そこで、公園をつくる場合には、この条例に基づいて設計をし、整備を進めていくことになる。また既設の公園についても、それぞれの施設の改修計画を立てて改善を進めていくことが必要なわけであるが、公園の場合、建築物や道路などのように条例に基づいた画一的な整備では十分とはいえない。


 なぜならば公園は、〈通行する〉〈車を止める〉など、単一の目的のためにある道路や駐車場とは異なり、〈散歩する〉〈憩う〉〈スポーツする〉〈遊ぶ〉といったさまざまな機能があり、また、その規模により、あるいは作られる場所により、全く違った配慮が必要になってくるからである。

 これまでは、条例にあるような基本的な配慮さえできていなかったので、それに基づく設計や改善を進めることが大切であった。しかしながら、人々が物質的な豊かさから心の豊かさを求めるようになってきた今日、それだけでいいのだろうか。「これで果たして公園に安らぎを求め、楽しみに来る人々に満足してもらえるであろうか」、「様々な機能にあったもっときめの細かい整備が必要ではなかろうか」、いま、このような問いかけがなされているといえる。


 福祉のまちづくりのひとつとして、島原振興局都市計画課では、このような視点から、もう一度公園を見つめなおしてみた。

 その出発点は、利用者の意見を聞くことであった。

 本論文は、視覚障害者のとの対話を元に百花台公園内にペットトイレを設置した事例を、やさしい公園づくりに向けたひとつの試みとして報告するものである。

 

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